やって来た祝日休み。
私は、
「ありがとう坂本君!行きたかったんだよねこの美術展!」
「いーえ唐堂には世話になってるからな」
都内より少し離れた場所で開催されている美術展に来ていた。
獅帥君達には3日間地元に帰ると言っていたが、帰る前夜に同郷の坂本君(私と同じく中学卒業と共に外の高校に入学した)と連絡が取れて、何と私が以前から話していた美術展のチケットを譲って貰ったと発覚。
坂本君もこのタイミングで帰る事、帰る道すがらにある事が運良く重なった事で実現出来た美術展への来訪。(荷物は既に送ってあるし、手荷物はロッカーに預けて準備万端)
因みに美術展のテーマは、世界の異類婚姻譚と名称されているモノだった。
「ほら唐堂」
「ありがとう」
小さなチケットを渡されて、ゲートで確認している人にチケットを確認して貰った後に中へと入る。
「凄い…!」
恐らく絵画の1つ1つは本物ではないんだろうけれど、幼い時に見た物が一挙に集まっている光景に圧倒される。
「…唐堂が喜んでくれて良かったよ。俺こう言うのよく分かんねえし」
「お姉さんに感謝だね」
「その代わりスゲエ手伝い命じられているけどな」
「うわーどんまい」
「おい他人事」
「ごめんごめん、ご飯奢るからさ」
野球部らしく刈り上げた黒髪(少し伸びている)をカリカリと掻いて「調子いいよな唐堂は」と呟く。



