そして、


「もしこれから何が起きても、凌久君がそれに関わっていると言われても、私は凌久君を恨まないし嫌わないよ」


 真っ直ぐな視線とその真っ直ぐな言葉で、俺を労る様に包んでくれた。


「だって凌久君が私に嫌な事をするって言う事はよっぽどだと思うから、きっと凌久君の力じゃどうにも出来ない事なんでしょう?」


 言葉にならず頷く。

 キュッと握られる。


「私は何があっても味方だよ」


 俺とそのイヤリングに語り掛ける様に言った。


「っ…」


 彼女の話す言葉の全てが、自分に付いた汚泥を綺麗に洗い流してくれる様に感じた。

 堪らなくなって、


「…凌久君?」


 彼女を抱き寄せていた。


「つづ」

「うん」

「つづ」

「うん」


 背後に彼女の腕が回って、更に強く抱き締めた。

 彼女が痛くなら程度に抱き締めて「つづ、一つ貰って欲しいモノがある」と耳元で告げる。

 身体を少しだけ離して、彼女の両の手に置いた。


「これは…」


 良いのかと視線で訴える彼女に頷く。


「つづに持っとって貰うた方が綺麗になる気ぃして」

「綺麗になる?」

「んー…神社にお祓い頼むみたいな」

「せ、責任重大だ…」


 少しだけ笑って「そんな事ない」と言いながらまた抱き締める。

 寂しい様な気がするが、彼女に持ってて貰った方が自分の中に溜まった鬱屈とする何かも浄化されるのではないかとそう思ったから後悔は無い。