彼女とのこのぬるま湯の様な関係に自分からトドメを刺さないといけないなんて。
「…凌久君どうしたの?」
彼女の前では本当に顔に出やすいらしく、彼女は伺う様に俺を見つめた。
これ以上は困らせたくなかった。
「つづ」
「ん?」
「俺、多分これからつづに嫌われる様な事をせなあかんくなる…かも」
「それは…どうして?」
彼女の疑問も尤もだ。
『凌久、お前はこれから利大のサポートに回れ』
『…何ですか?この前は唐堂綴の信頼を勝ち取れと仰っていませでんしたか』
『状況が変わった。利大がオオミカのシンカンとなって、此方にも希望が見えた』
贅を拵えた私室の中で、男は椅子に座りながら俺の疑問を鼻で嗤った。
『オオミカとして周囲に認められていない不良品のミケに価値などない。オオミカのシンカンとなった利大の方が未だ価値がある』
『…』
男は机に置かれたワイングラスを揺らし、口を付ける。毒でも入っていれば良いのに。
残念ながら、
『…あの女には退場して貰う。これから利大をミケにするのにあの女は邪魔だ』
死なない上に不穏な言葉を吐いたのだ。
『退場?』
グラスを置いた男は、肉付きの良い顎を摩ってニヤリと笑う。
『あの女を邪魔に思っているのは私達だけではない』



