他者の不幸を吸い尽くそうとする虫どもの欲望は肥大化していき、悪臭を放ちながら、涎を垂らして貪り尽くす。

 俺は周囲に敬われて仕方がない男の実情を知って憐れんだ。

 俺でさえこれなのだから、アイツはどんな思いで生きていたのか。

 守ってくれる親類は自分に興味は無く、知ろうともしない。唯一実情を知る妹は病がちで、守れるのは自分1人。どんなにオオミカ等呼ばれていても、唯の子供が出来る事は限られている。
 
 いつの間にか妹が生きる理由になっても可笑しくはなく、ソドムで彼女が言ったあの言葉も、


『獅帥君もしこのまま妃帥ちゃんに何かあったら、後を追うよ!?どうして分かんないのそれが!』


 強ち間違えではなかった。

 妹の死に追従しようとした奴が、今じゃあたった1人の存在に寝かしつけられるとか…。

 
「膝枕か…ええなあ獅帥。俺もつづの膝で寝たい」


 羨ましい本当に。


「ほ、本当に揶揄うのよしてってば…」


 と、恥ずかしがっているのがまた可愛いらしかった。

 きゃー!と両手で頬を押さえる彼女を見て、今の自分が現状に満足している事を改めて理解したと同時に、悲しくなる。

 これから彼女に言う事は、自分にとってはイヤリングの話をするぐらい辛いモノだった。