誰も居ない談話室のソファーに座りながら、イヤリングを手に取って思い出に浸る。

 すると、


「待った凌久君?」


 彼女が現れた。


「つづ待つなら幾らでも待てる」

「何言ってんの」


 笑いながら対面のソファーに座った彼女は冗談だと思っている様だけれど本音だ。1時間でも2時間でも待てる、きっと彼女の事ならいつまでも。


「…久々に見るねそのイヤリング」

「ああ。そう言うたら獅帥とあの後はどないした?」

「寝不足だったみたいで無理矢理寝かしつけちゃった」


 オオミカに寝かしつけ。

 想像するだけで笑えてクッと笑うと「寝かしつけると言うか、寝ていいよって膝枕したと言うか…!」と何故だか大慌てで言い訳するが、更に笑いを誘われた。

 俺以上に感情が希薄であろうあの獅帥が…。

ーーー昔はアイツの立ち位置が羨ましかった。

 アイツの立場なら、四葉は家にあんな扱われしなかっただろうし、母親だって…とも思っていたが、今ならアイツの立場も俺と同等、いやそれ以上に過酷なのを知っている。


『ふふ…今晩も行こうかしら』


 花に群がる虫どもの羽音が五月蝿く、それは子供の俺の耳にも届いた。


『やあね、今日は私の番よ』

『なら一緒に行きましょう?2人も3人も変わらない、きっとお相手して下さる』

『そうねそうしましょう』