人前じゃなければ腰が抜けていたと思う。

 それだけ俺にとっては重要で、視界が広がる様な出来事だった。

ーーー盗もうとした女がどうなったかその後の事はよく覚えていないが、いつの間にか俺の前から消えていた。

 これで女に懲りたかと言われれば、そもそも俺を取り巻く状況は変わらないから、相変わらず女との関係は変わらないし、彼女もあれ以降は触れて来ないのを良い事に俺も話題には出していない。

 でもちゃんと分かっている。

 彼女が守ったモノは、拾い上げたモノは、何にも変え難いモノだと理解している。

 奇妙な男こと海祇渚とファーストコンタクトはどうでもいいが、唐堂綴が特別な存在だと思い始めーーー掛け替えの無い存在になるのは時間は掛からなかった。