「嫌な物はイヤ」
「もう!」
「アンタこの間の!」
唐堂綴は俺のイヤリングを盗った女を見て「あーあの時の痴女先輩」と言った。
集団の誰かが吹き出す声が聞こえた。
「は、はあ!?痴女って」
「やっぱ痴女なんかと付き合いある様な奴やん、気に食わんで正解」
渚と呼ばれた男が腕を組んで、見下した様な目で見られた。唐堂綴は良いとして、コイツはムカつく何だか。
「んぐぐ…痴女先輩が居るから何も言い返せない」
「痴女じゃないし、コレ見てよ!」
2人のペースから巻き返す様に、女が掲げた今この集団で1番注目を集めていた物。(今は唐堂綴と渚と呼ばれた男に掻っ攫われたが)
唐堂綴は首を傾げて、渚と呼ばれた男は「ああ?」とイヤリングを見る。
あの時に言えなかったイヤリング。
「私は凌久の大事な物を貰ったんだから私は痴女じゃなくて彼女なの!」
彼女は勝ち誇った女の顔を見て、俺の顔を見る。
どんな表情をすれば良いのか分からず、曖昧に笑った。
恐らくコレだけで、察しの良い彼女は気付くだろう。
俺が話せなかった大事なーーー…。
「ふーん…それ見てもいいですか?」
冷め切った表情で唐堂綴はそう言った。
「見れば?」
女はどうぞ存分に見ればいいと唐堂綴に渡して、彼女は陽の光に透かす様に掲げた。



