過つは彼の性、許すは我の心 参

 

 神か何かからそう言われているのだろう。無駄な努力はせず諦めろ。いつもの事だ。

 結局は唯一の持ち物を手放す判断すら付けられない、言われた通りにへこへこする自分にはお似合いの結果なんだ。


「ねえ凌久!」

「ん?」


ーーーその日の俺は本当にぼーっとしていたから、元々くっ付いていた女が俺の目の前に差し出した物を理解出来なかった。


「それって凌久がよく持っている」


 片側に居た女が目を丸くした。

 俺とそこそこ仲の良い女達は確かに知られている。(隠していた訳でもないし)

 そもそも俺の物は女達の趣味や流行に合わせた物が多く、要らなくなったら捨てるか欲しいと言われればあげていたが、デザインが特別可愛い訳ではない為、欲しいとも言われた事が今までなかったが…。


「そう凌久が私にくれたの!」


 厚かましくも女が堂々と言い放つ。

 あげていない。

 きっと昨日この女と寝ていた時に盗られたんだ。

 
「…嘘、凌久本当に?あれって大事な物じゃないの?」


 後に絡んだ女が疑わしい目で見てくる。

 女は男より機微を受け取る能力に優れていると言うけれど、どうやら女達の間では一応俺の大事な物と言う認識であるらしい、が。


「そうよ!大事な物をくれたって事は私が本命でしょう!」


 ね!凌久!と俺に同意を求める笑う女は、他人の大事な物を盗ると言う事に罪悪感もないらしい。


「凌久?どうしたの?」