過つは彼の性、許すは我の心 参



 全てを話した訳ではないのだろう。

 美しくも傲慢な幼馴染に、実直でその傲慢さを愛した幼馴染との友情と不和、そしてーーー…。

 
「…って話。面白くもなんともないでしょう」


 帰結。

 彼女からすれば意味が分からないだろう。

 初恋相手を同じ幼馴染に奪われ、見せつけられ、虐められ、当てつけに死なれた。


…。


「…気持ち分からへんでもあらへんなあ」

「え?」

「いや何でも」


 言った所で彼女が理解出来るか。(上手く表現出来る気がしないし)

 全てを話された訳じゃないから断言出来る訳じゃないけれど、少なくともその幼馴染の理不尽さは、俺の方が理解出来る。

 その女は俺とは違って反抗する事を選んだだけ。

 暗い場所で卑屈に生きて来た自分と、その女はよく似ている。

 明るい所で笑っている連中が憎くて、憎くて、憎くて、それでも。


『凌久ごめんね…!』


「…凌久君?」

「ああ、すまんすまん」


 ポケットの中のイヤリングが揺れた気がした。


「…んで?俺の何聞きたい?」


 嫌な事を思い出した。

 気を取り直して、ニコニコと笑って聞けば。

 油断していた。


「ポケット、何入っているの?」


 この女が普通を装った、俺の琴線に触れて来る女だって事。


「…ポケットって」

「よく触ってるじゃん」


 無意識にそんな事をしていたのにも気付かなかった。