全てを話した訳ではないのだろう。
美しくも傲慢な幼馴染に、実直でその傲慢さを愛した幼馴染との友情と不和、そしてーーー…。
「…って話。面白くもなんともないでしょう」
帰結。
彼女からすれば意味が分からないだろう。
初恋相手を同じ幼馴染に奪われ、見せつけられ、虐められ、当てつけに死なれた。
…。
「…気持ち分からへんでもあらへんなあ」
「え?」
「いや何でも」
言った所で彼女が理解出来るか。(上手く表現出来る気がしないし)
全てを話された訳じゃないから断言出来る訳じゃないけれど、少なくともその幼馴染の理不尽さは、俺の方が理解出来る。
その女は俺とは違って反抗する事を選んだだけ。
暗い場所で卑屈に生きて来た自分と、その女はよく似ている。
明るい所で笑っている連中が憎くて、憎くて、憎くて、それでも。
『凌久ごめんね…!』
「…凌久君?」
「ああ、すまんすまん」
ポケットの中のイヤリングが揺れた気がした。
「…んで?俺の何聞きたい?」
嫌な事を思い出した。
気を取り直して、ニコニコと笑って聞けば。
油断していた。
「ポケット、何入っているの?」
この女が普通を装った、俺の琴線に触れて来る女だって事。
「…ポケットって」
「よく触ってるじゃん」
無意識にそんな事をしていたのにも気付かなかった。



