それに気付いたのは今清水の不意の一言だった。
今清水もまさかだっただろう。
世間話をしただけだろうに。
『そう言えば唐堂君ってあの辺りに住んでいなかったっけ』
『ん?何の話?』
『大分前に話題になったとある1人の女子中学生が、学校の行事中に刃物を振り回して、そのまま自殺したと言うセンセーショナリーな大事件の』
自分の話のせいで唐堂綴の顔が凍り付くとは夢にも思わなかったのだろう。
『と、唐堂君?』
『…ううん。えとあー地元だよ』
『そ、そうなのか…』
『…』
『…』
あの後の今清水の挽回の為の焦り様と言ったら今思い出しても笑える。結局傍で話しを聞いていた先輩方が別の話題を振ったお陰で、如何にか話は流せたが。
「…どうして、そんな話聞くの?」
「興味本位」
そう言えば、唐堂綴は眉を顰める。
唐堂綴からすれば、人の傷口を平気で抉る悪い男に見えるのだろうけれど。
最初の出会いですげなくされた意趣返しぐらいはさせて貰いたかったのと、いい加減自分がこの女の何に興味を引かれているのかハッキリさせたかった。
「…はあ」
嫌そうにしても俺が引かない事を悟った唐堂綴は溜息を吐いて前置きをした。
「…もし答えたら私からも1つ聞いていい?」
「ええよ」
彼女が話した内容は、今まで自分が考えていた彼女の像から掛け離れていた。



