匡獅も僕が離れる事を悲しんでくれているのか。
ギュっと抱き締めると、匡獅も腰を抱く腕を強めた。
離れるのは身を切られる程辛いけれど、
「匡獅。今まで本当にありがとう」
紛れなく本心であり、本当に言いたい言葉は言えなかった。
“愛している”
心の中でそう呟いた瞬間、
「なあ八重」
「うん?」
「獅帥達に飽きたか?」
「はあ?」
腕の中の切れ長の美しい瞳が僕を仰ぐ。
純粋に疑問に思っている様に見える。いや言われた意味が分からなかった。
「お前子供が好きだって言ってただろう」
「そうだけど…それが飽きたとどう繋がる」
コイツの突拍子も無い言葉に振り回されるのはいつもの事だが、今日は特に分からなかった。
「好きなのは好きなんだな?」
「獅帥達の事は好きだ、だからそれと飽きるがどう繋がる」
「飽きた訳じゃないんだな。なんだ」
良かったと安心した様に笑う匡獅に、妙に怖気が走るのは何故なんだ?
100人中100人が虜になるだろうそんな微笑みなのに、幼い時から知っている人間が別人になった様な感覚と言うか。
ギュッと僕に抱きついた匡獅は更に、
「お前は凄いよ。俺ならお前の子が出来たと言われたら、愛せる気がしない」
答えに困る様な事を言う。



