過つは彼の性、許すは我の心 参

 

 匡獅も僕が離れる事を悲しんでくれているのか。

 ギュっと抱き締めると、匡獅も腰を抱く腕を強めた。

 離れるのは身を切られる程辛いけれど、


「匡獅。今まで本当にありがとう」


 紛れなく本心であり、本当に言いたい言葉は言えなかった。

“愛している”

 心の中でそう呟いた瞬間、


「なあ八重」

「うん?」

「獅帥達に飽きたか?」

「はあ?」


 腕の中の切れ長の美しい瞳が僕を仰ぐ。

 純粋に疑問に思っている様に見える。いや言われた意味が分からなかった。


「お前子供が好きだって言ってただろう」

「そうだけど…それが飽きたとどう繋がる」


 コイツの突拍子も無い言葉に振り回されるのはいつもの事だが、今日は特に分からなかった。


「好きなのは好きなんだな?」

「獅帥達の事は好きだ、だからそれと飽きるがどう繋がる」

「飽きた訳じゃないんだな。なんだ」


 良かったと安心した様に笑う匡獅に、妙に怖気が走るのは何故なんだ?

 100人中100人が虜になるだろうそんな微笑みなのに、幼い時から知っている人間が別人になった様な感覚と言うか。

 ギュッと僕に抱きついた匡獅は更に、


「お前は凄いよ。俺ならお前の子が出来たと言われたら、愛せる気がしない」


 答えに困る様な事を言う。