過つは彼の性、許すは我の心 参



 キャピキャピと2人で、少女漫画の内容について話し始める。


「(コイツら何なんだ…)」


 放心気味に2人の少女漫画談義を適当に相槌を打ちながら聞きつつ、男の方を観察する。

ーーー後から聞いた話では、下級生の名は惣倉影刀。

 惣倉の中でも“兄のお荷物”と呼ばれているらしいその男は、綺麗な顔付きの割には目立たない印象で、特に唐堂綴と話していると何処にでもいる年下の子供だと思った。

 ただ長年培われた俺の警戒心が“コイツを甘く見るな”とそう告げている。

 何かしらの力に恵まれていて、けれどそれを表に出さずに過ごしていると言う事は、その方が都合が良いと言う事なのだろう。

 触らぬ神に祟りなし。

 プライドもなく、ある程度の事は許容出来るのが自分の強みであると自覚しているから慣れるのにも早い。

 それに不可思議な男とこの不可思議な男を平凡な人に変えてしまう唐堂綴に俄然興味が湧き、以降は生徒会にもよく行く様になり、意識して彼女とも話をしていた、が。

 平凡な女の話題もこれまた平凡で、特出すべき部分を感じなかった。

 それでも1つだけ。

 唐堂綴が顔を曇らせる時があった。

 だから2人っきりになった時、


「なあ…アンタ何で地元から離れたんや?」


 聞いてみる事にした。