「なあ名前なんて呼んだらええ?」
「んー何でもいいよ。つーちゃんでもつづちゃんでも」
お好きに。
そう言ってシャープペンシルでノートに書き込む作業は止めない。
ここまであからさまに興味ない態度されるの、初めてだわ。
「ふーん…じゃあつづで」
「はーい」
聞いてんだか、聞いてないんだか。
その後は黙々と作業に没頭する唐堂綴の様子を伺うが、此方が見ている事に気付いているのに全くと言って良い程気にしない。
…人が来るかもしれない場所でセックスするなんて不潔だなんだと言う思春期故の潔癖か、それとも。
「あ、ちょっと」
「つづ」
子供じみたノートを引っ張ると言う行為に「何?」と訝しげに俺を見る。
肘を突きながら、彼女の顔に掛かる髪を片方の手で払う。
「意識している?」
「…」
俺の事。
彼女は呆然と俺を見てーーー。
「何を?」
本当に不思議そうに言った。
「私が凌久君の事を好きって意味?」
濁した部分を言葉であっさりと表現されると、立つ瀬がない。
「は」
「凌久君が勘違いしそうな事って…あーもしかして彼女本命?じゃあ悪い事…それとも私が凌久君の事を昔から好きだから態と辛く当たっている様に見えたとか。うーんどっちかな…設定としてはどっちも美味しいよね」



