そう言って、女が乗り上げる机の傍にあった椅子に座った。
「先輩ご存知だと思いますけど、顧問は風紀委員の顧問兼生徒指導の先生です」
「…っ」
「ほら先輩もう先生来ちゃいますよ」
どうぞお帰りは彼方です。
指で入り口を示して、鞄の中からノートを広げて作業し始める。
女も分が悪いと思ったのか「凌久行こう」と袖を引いた。
けれど、
「あ、凌久君は置いてって下さいね」
「はあ!?」
「生徒会今佳境なんです。ただでさえ人集まんないんで」
「ふざけ、」
「先生来ますよ」
勝負と言うべきか、唐堂綴の圧勝で女はキッと睨み「絶対に後で連絡して!」と俺に言い含めて足音を鳴らしながら生徒会室に出て行った。
「…今清水行き損とちがうか?」
ちらりと唐堂綴が俺を見上げる。
「丁度先生に用事あったからいいの」
ーーー自分と唐堂綴が同じ空間で生徒会活動をする時は、姉小路や勧誘して来た先輩、さっきの今清水が居たからどんな性格か把握もしていなかったが、大人し目な女だと思っていた。
「凌久君ほら手伝って」
プリントを差し出されて、言われるがまま手に取りながら、結構良い性格しているんだなと、唐堂綴の見方が変わりーーー興味を持った。
今清水達と話している内容から普通の一般家庭の生まれで、極ありふれた平凡な女と言う印象だったが。
「(案外関わったら面白いかも)」
自分の価値を上げる為に、将来見込みのある、または親の社会的立ち位置が高い女(出て行った女は後者)を選んで付き合いをしていた自分にとって、大きな変化。
初めて、そう言うの抜きにして関わってみたいと思った女が唐堂綴だった。



