過つは彼の性、許すは我の心 参



 そう言って、女が乗り上げる机の傍にあった椅子に座った。


「先輩ご存知だと思いますけど、顧問は風紀委員の顧問兼生徒指導の先生です」

「…っ」

「ほら先輩もう先生来ちゃいますよ」


 どうぞお帰りは彼方です。


 指で入り口を示して、鞄の中からノートを広げて作業し始める。

 女も分が悪いと思ったのか「凌久行こう」と袖を引いた。

 けれど、

 
「あ、凌久君は置いてって下さいね」

「はあ!?」

「生徒会今佳境なんです。ただでさえ人集まんないんで」

「ふざけ、」

「先生来ますよ」


 勝負と言うべきか、唐堂綴の圧勝で女はキッと睨み「絶対に後で連絡して!」と俺に言い含めて足音を鳴らしながら生徒会室に出て行った。


「…今清水行き損とちがうか?」


 ちらりと唐堂綴が俺を見上げる。


「丁度先生に用事あったからいいの」


ーーー自分と唐堂綴が同じ空間で生徒会活動をする時は、姉小路や勧誘して来た先輩、さっきの今清水が居たからどんな性格か把握もしていなかったが、大人し目な女だと思っていた。


「凌久君ほら手伝って」


 プリントを差し出されて、言われるがまま手に取りながら、結構良い性格しているんだなと、唐堂綴の見方が変わりーーー興味を持った。

 今清水達と話している内容から普通の一般家庭の生まれで、極ありふれた平凡な女と言う印象だったが。


「(案外関わったら面白いかも)」


 自分の価値を上げる為に、将来見込みのある、または親の社会的立ち位置が高い女(出て行った女は後者)を選んで付き合いをしていた自分にとって、大きな変化。

 初めて、そう言うの抜きにして関わってみたいと思った女が唐堂綴だった。