失敗作、役立たず。

 そう言われた自分はへこへこと、血の繋がった相手達に頭を下げないと生きていけなかった。

 容姿と頭はそれなりに恵まれたお陰で、汚点と呼ばれた自分は、一族の長たる男の駒として認められて、漸く生きた心地がした。

 そこまでに至る苦労は一言では語れない。

 叔母の人生を糧に生存を許され、それでも足らずに教養を身に着け、容姿に惹かれる相手を上手く籠絡し、上へ上へと上り詰めた。

 今では一族の末席には入れられ、行く行くは医者となって、この家の為…いや土師当主の人生の為に生きなければならない。

 自分の人生は、みっともなくても生き足掻かなければ到底生きては来れなかった。

 今だって自分を下に見ていた相手達が、自分達と同列に扱われる事をよしとしていないのは分かっていた。

 飄々とした顔をしながら必死さを隠すのも、露呈すれば足元を掬われる事は分かりきっていて、結局信じられるモノは自分だけ。

 叔母にはこれ以上負担を掛けられない。


『四葉さん聞いた?』

『聞いたわ。この間の会合の時に随分お楽しみになられたみたいよ。しかも沢山人が居たとか』

『あらあら…保宇様の?』

『ええ』

『…お楽しみになったと言うよりは、お楽しみにさせられたのではなくって?』

『馬鹿な人。価値の無いモノを守る為に必死になっちゃって』

『でもお姉様がお役目果たせなかったんですから当然では?』