別の事を考えながら頭を下げる彼女の言葉を反芻する。
「次の月?」
「そう。また実家に帰って整理色々してってなるから…ほら今度祝日あって3日間お休みだからその間に全部済ませちゃおかなって」
「そうか…」
「獅帥君?」
3日…。
その間に彼女と会えなくなると思うと、何故だか寂しく感じた。
高々3日顔を合わせないなんて今までもあったのに。
気付いたら、
「また…甘えたい気分?」
彼女を抱き締めていた。
頷くと「そっか」と優しく頭を撫でられて、眠くなって来る。
「ふふ…眠いでしょう」
こくこくと頷けば「しょうがない」と言って、一度俺から身体を離すと隣に座って「はい此処に頭を置いて」と彼女は自身の膝を叩く。
「膝枕してあげる。特別に」
悪戯気に言った後、彼女はハッとして。
「皆んなには内緒ね!私が恥ずかしいから!」
そう付け加えた秘密にする理由はよく理解は出来なかったが、流されるまま彼女の膝に頭を置く。
撫でられた頭の感覚と、2人しかいない空間に心地良さが増す。
「疲れてたんだね…お疲れ様、獅帥君」
うつらうつらする白昼夢の中。
『獅帥よく聞きなさい』
俺に両肩に母の指が痛い程食い込む。
目は血走り、髪は掻きむしったかの様に乱れていて、唇は血が滲んでいた。
単純に怖かった。
儚気で美しい母親の姿は狂気に呑まれて見る影も無い。
ああ、思い出した。



