「獅帥君!」
背中を思いっきり叩かれて、現実に引き戻される。
「やっぱり具合悪いんでしょう?」
彼女が心配そうに俺を見上げる。胸に残る蟠りが溶けていく気がした。
それでも最後の土師利大とーー…。
『不快な思いをさせて申し訳ありません獅帥様。私達からすればあの様な女と言いたい所ですが…貴方にとっては大事な方。だからこそです。私が利大を連れて来たのは貴方の為。貴方は、』
「ほらもう此処座る!」
グイッと彼女に両肩を押されてソファーに座らされる。
「て言うか、初めてフレアの部室来たかも」
繁々と彼女が部室を見回る。
「学園内にある貴賓室より貴賓室っぽくない?あ、でも漫画置いてある…最新型のパソコン、テレビこれ何インチ?…凄いねえ最強の子供贅沢部屋だ」
調度品の数々は学園側から押し付けられた物だが、部員それぞれが持ち寄った趣味の物も点在していて、なるほど確かに子供部屋だ。
知らない内に彼女を連れ立って部室まで来ていたらしい。
「獅帥君ボーッとしている」
「…そう見えるか」
「うん」
目の前で来た彼女は俺の前髪に触れる。
「目は隈とかないね…」
優しく触れる俺が噛んだ包帯に包まれた指先。
「指噛んで悪い」
「本当人前では、めっ」
グイグイ眉間を指先で押される。
…やっぱり意地悪したくなる。



