目の前の机に置かれた紅茶を飲みながらそう言うが、一言も声を出さない。
甘いな、と思いながらティーカップをソーサーに戻して、感情に呑まれた女を見つめた。
『ーーーお前が誰に物を言っているのか分かったか』
『獅帥様、初めてこの様な場所でどうやら舞い上がって、』
父親の助け舟を視線で黙らせる。
『最後までやり通すべきだったな。無知で頭の悪い女を演じていれば、まだ俺に物言えただろうな』
『…』
『けど此処は天條だ。そしてお前はシンカンだ。俺に口答えも許されていない』
俺が愚物を見る目に怯えた土師利大。
所詮この程度か、と。
俺が立ち上がると今度こそ止められる事なく、ドアの方まで歩く。
『お前があの女呼ばわりする綴は、初めて俺とシンカンを相手にして、怯えはしても向き合う事をやめなかった。妃帥にも言う事を聞かせた』
『…』
妃帥と綴が可笑しな寸劇していた事を思い出して、笑ってしまった。
『躾けておけ』
土師保宇にそれだけ言って扉を開く。
すると、
『アンタもどうせーーられる』
呪う様な、這う声。
後ろを振り向くと俯きながらも身体を震わせている。
初めて出会った時の様に、往来で睨み上げた素の土師利大がそこに居た。
『そうなったらアンタどうなっちゃうのかしらね』
よく聞き取れなかった為、訝し気に土師利大を見れば。
『もう一回言ってあげる!アンタはいずれーーー』



