過つは彼の性、許すは我の心 参



 目の前の机に置かれた紅茶を飲みながらそう言うが、一言も声を出さない。

 甘いな、と思いながらティーカップをソーサーに戻して、感情に呑まれた女を見つめた。


『ーーーお前が誰に物を言っているのか分かったか』

『獅帥様、初めてこの様な場所でどうやら舞い上がって、』


 父親の助け舟を視線で黙らせる。


『最後までやり通すべきだったな。無知で頭の悪い女を演じていれば、まだ俺に物言えただろうな』

『…』

『けど此処は天條だ。そしてお前はシンカンだ。俺に口答えも許されていない』


 俺が愚物を見る目に怯えた土師利大。

 所詮この程度か、と。

 俺が立ち上がると今度こそ止められる事なく、ドアの方まで歩く。


『お前があの女呼ばわりする綴は、初めて俺とシンカンを相手にして、怯えはしても向き合う事をやめなかった。妃帥にも言う事を聞かせた』

『…』


 妃帥と綴が可笑しな寸劇していた事を思い出して、笑ってしまった。


『躾けておけ』


 土師保宇にそれだけ言って扉を開く。

 すると、


『アンタもどうせーーられる』


 呪う様な、這う声。

 後ろを振り向くと俯きながらも身体を震わせている。

 初めて出会った時の様に、往来で睨み上げた素の土師利大がそこに居た。


『そうなったらアンタどうなっちゃうのかしらね』


 よく聞き取れなかった為、訝し気に土師利大を見れば。


『もう一回言ってあげる!アンタはいずれーーー』