過つは彼の性、許すは我の心 参



 ふくよかな胸元に手を当てた土師保宇は、


『獅帥様もご存知の通り我が土師の家は医療の最高峰。ミケとなられる方はいずれ貴方のお子を身籠る。そして貴方のお子は完璧で居なければならない。我々は心配なのですよ。利大から聞きましたよ唐堂綴がどんなに酷く惨い女だと』


 芝居がかった口調で一気にそう語る。


『惨い?』

『ええ恐ろしい女です。もう1人の愛娘である円嘉が苦しんでいた時にあの女は助けなかったとか。ああ私が仕事に託けて傍に居なかったばかりに…!』


 胡散草ぐらいの娘思いをアピールしていても、この男の本性は知れている。娘も息子も、この男は自分の血縁をただのコマとしか思っていない。

 祖母も父にも嫌われている。特に父の逆鱗触れたらしく、久しく天條とは遠ざかっていた。

 父が怒る時は必ずあの人が関わっている。

 俺達に優しく笑うあの人。

 オオミカではなく、ただの子供として接してくれた。


『獅帥さん、あの女の事好きなんですか?可哀想…』


 憐れむ様な女の顔。

 怒りが一気に身体を駆け巡りそうになったが、土師利大の隣に居る男の此方の反応を見る様な視線に留まる。

…落ち着け、俺が変に反応すれば隣の男が彼女に何をしでかすか。


 一つ呼吸を置く。


『もしそうだとしたらどうなんだ、お前に何が関係ある』