『さんではなく、獅帥様だろう』
『えー?こっちの方が親しみやすいと思ったんだけど』
父親の諫言もどこ吹く風。
『でもこんな格好初めてだから新鮮』
明るかった髪を黒く染め直し、服は丈の長いパステルカラーのワンピースを着用。清楚な令嬢を彷彿とさせるその姿は、きっと何も知らない男達が見たら目を惹く美しさだった。(中身はまだ追いついていなさそうだが)
『ありがとうございます!獅帥さん』
強引さは父親似らしい。
やれやれとする土師保宇の隣に『お父様が早く呼んでくれなかったから、忘れられたかと思っちゃった』と言いながら、勢い良く座る土師利大。
『何を言っている?可愛いお前を忘れるなんて、そんな事ある訳ないだろう』
『もう本当に?』
『分かった分かった好きな物を後で買って上げよう』
『やったー!』
白々しい。
こんな物に付き合わされるとは。
『…話は本当にないようだな』
『ああお待ち下さい獅帥様』
またもや止められて流石に堪忍袋の尾が切れそうになったが。
『ーーー獅帥様。念の為に確認ですが、唐堂綴は貴方の妹のミケであって、貴方のモノではないのですよね?』
言われた意味を正確に捉える事が出来ず固まった。
『お前に、関係あるのか』
『ええ!勿論ですとも!』



