自分のおでこと比べるが、うんやっぱり熱はなさそう。

 じゃあ内臓的な部分に何か、それこそ圭三郎さん案件か。


「獅帥?」


 清維が不思議そうに呼び掛けるのを他所に、色々考えていたから気付かなかった。

 獅帥君の額に手を当てている手首を握られて、帷有墨に傷付けられた包帯の巻かれた指先を。


「ひゃ」


 湿った感覚。

 続け様に、


「いっ!」


 ガリっとされて変な声が出た。

 空気が凍った。


「し、獅帥お前人前で…!」


 鉄将君もアワアワしている。

 そりゃあそうだ指噛んでいればね!

 クラス中の視線が私と獅帥君に注がれて顔を上げられなかった。グイッと引っ張られる。


「獅帥!」

「おい待て!」

「鉄将来るな。教師には適当に言っておいてくれ」


 無理矢理立たされて、何処かへと引き摺られる私の背後で清維と鉄将君が叫ぶ。

 恥ずかしくて顔を上げられない私はされるがままだったが。


「つづ!」


 凌久君の言葉には流石に振り向かざるえなかった。

 
「後で談話室!」

「わ、分かった!」


 ズルズルと引き摺られながら凌久君に返す。

 凌久君もしかして何か話があったから来ていたのかもしれないと今更ながらに思い至ったが時既に遅し。

 その時には、呆れた凌久君に手を振られ、教室を後にする事になっていた。