「獅帥さんまた!」


 晴れやかな笑みと共にリタ…先日正式に土師の一族に迎え入れられた土師利大は、獅帥君の腕から手を離して自分の教室へと戻る。

 更に騒つく教室。

 リタは私と…近くにいた清維を見るのを忘れずに、笑顔で去って行った。

 清維が瞬間湯沸器になり掛け、人前である事に気付き、髪の毛を払って直ぐに気を落ち着けた。コンマ2秒の出来事。取り乱さないお嬢様の鏡だった。


「獅帥君」

「…おはよう綴」


 流石に疲れた様子の獅帥君が可哀想になったのか、凌久君は獅帥君の席から退く。獅帥君が大人しく席に座れば、後から入って来た火ノ宮君の…うわあ顔が。

 視線で私を殺そうとする一睨みを浴びせ、不機嫌そうに席に着く。火ノ宮君の周囲は一瞬にして静かになった。


「…凄いなあの子」

「鉄将君…」


 脳筋代表の鉄将君ですら、少し疲れた顔をして席に座る。


「朝から車の中でスゲエベタベタされて…俺は助手席座っていたから其処まで被害なかったんだけど、今日に限って楽いなくてな。マサが…」


 その横顔から触れた奴は皆殺しにするオーラを放っている火ノ宮君に、周辺の席の人は居心地悪そうだった。

 木野島君なら上手い事リタをいなすことも出来ただろうが、その木野島君が今日はいなかったらしい。…土下座して許されるかな私。