頭の中で色んな考えが駆け巡り、訳が分からなくなって行く。


「お前が今考えている事は序の口だ。今後は待った無しで来るだろうよ」

「…」


 その次々と来ると言うのは嫌でも分かった。

 しかも引き返せない所まで来ている。

 今までは周りの人が助けに来てくれたが、それがいつでもとはいかないだろうし。

 特にこの場所、天條邸では。


「…この家はプライベート筒抜けだが、お前の言った通り此処だけは限られた人しか入れない様になっている」


 混乱する私に突然分かりきっている事を言うカズミさん。


「…だから?」  


 意図が分からずに聞き返せば、バツの悪そうな顔をしながら前髪を掻いて。


「…お前も息抜きしたければ此処に来いよ」


 ぶっきらぼうにそう言った。


 …そうかカズミさんがこの場所を管理しろって言ったのって。

 今更思い至り、


「ふふ…カズミさん分かりづらい」


 けっと言わんばかりに背中を向けたカズミさんにニマニマしてしまった。

 言い方は乱暴だが、こそばゆい優しさに暖かな気持ちにさせられた。

 要はお前も、此処で辛い事があったらガス抜きにいつでも来いよって事なんだよね。

 色々謎が残っているが、


「これからよろしくお願いします!一葉師匠」


 恐らくこの屋敷で1番本音を語ってくれ、且つカズミさんの出来る限りで、私に逃げ道を与えてくれたのが分かったので、心を込めてそう呼んだ。