渚君からは、人に自分で火を点けろと言って火を点けさせたとかも聞いたし、洋直ちゃんに対してもかなり酷い事をしていたと聞く。
何が其処まで妃帥ちゃんを狂気に走らせるのか。
「お前の事だって自分の姉貴の前ではちゃんと考えているとか言っていたが…妃帥も獅帥もお互いが見えている様で見えていないからな、振り回されるのがオチだ」
「…見えていない?」
「見えていないって言うより妃帥は確信犯だし、最近の獅帥は暴走しているーーーお前に対してだけ」
見下ろされた瞳は憐れみが込められていて、どんな態度で返せば良いのか分からない。
「妃帥にとっては快挙だよ。獅帥の今の変化は」
「…」
「でもお前にとっては、毒でしかねぇよ。お前が岸谷洋直みたいに獅帥に惚れれば気が楽だろうが、今のお前は惚れていると言うより戸惑っているって言うのが正しいだろう」
正解だった。
確かに私と獅帥君はする事はしているし、普通だったら付き合っても可笑しくない距離感にはいるんだろうけど、恋愛と言われたら首を捻る。
獅帥君と接していると、時々見えない何かが私を引き摺り込む様な感覚がある。初めて獅帥君に触れられた時に恋愛のドキドキと言うよりは、何かの捧げ物にされた生贄の様な気すらあった。
そう、それこそ神饌と言う名の通りの様なーーー…。



