勝手にガックリ気分の私に、カズミさんは。
「何で、」
「ん?」
「その名前なんだ?」
呆然と私を見るカズミさんの焦点は合っているんだか合っていないんだか。でも私の返答を聞きたがっている様な気がした。
真剣な感じの雰囲気に若干タジタジになりながら、
「カズミさんがよく見ているし、私が好きだから」
好きな物の名前で呼ぶと、親近感が湧いてもっとカズミさんとの仲良し度も上がると言う私なりのお馬鹿な考えに基づくもので科学的根拠はないです、ごめんなさい。
「カズミさん?」
「…」
私の答えに俯くカズミさん。どうしよう何か間違っ、
「…これから話す事は妃帥の不利になる事だ。それを聞いてアンタが聞かなかった事にするのもいい」
慌てている心中とは裏腹に。
カズミさんはゆっくりと私を見上げながらそう言った。
立ち上がったカズミさんは、自分の左目辺りを触る。
よく見れば黒色の瞳に色素が薄く見える。
カズミさんは薄く笑って、
「俺の処遇をどうするかって話になった時、妃帥が近くに置いてあった置物で思いっ切りき傷付けた。だから殆ど見えてない。周りには分かんねぇ様に、カラコン入れてるけどな」
衝撃的な言葉を放った。
『“私達をそんな目で見るな”ってナイフで切られた』
鉄将君もそんな話をしていたけれど、時々見える妃帥ちゃんの狂気性。



