それよりも、名前も名乗らせて貰えないって結構な事じゃない?
不可思議な疑問を投げるだけ投げたカズミさんは、唸り声をあげたい私を置いて、クローバーを眺める作業に戻ってしまっていた。
ーーー名字だけで呼ばれ、周囲には透明人間として扱われる。さっきの女の人はその事を知らない…んだよね。この場所って本館から見えない場所で、カズミさんは基本的には妃帥ちゃんの傍にいるんだから、どうやって知り合ったんだろう。いや話が逸れた。
今更名前が別にあるって言われてカズミさんって言うのもなあと言うのが正直な感想。
そこそこ仲が良いと勝手に思っていたわけで、なんとなく寂しさも感じる。
じゃあ師匠って言うのもお硬い気がするし…。(そもそも悩む内容ではない様な気がしてきた)
「うーん…」
「何唸ってんだよ」
座りながら胡乱げな目で見上げられる。そこでカズミさんの背後にあるクローバーが目に入った。
そうだ、
「一つ葉…一葉…一葉…うん!一葉師匠!良くない?」
これだ!今日の私は閃きが違うぜ!(少年漫画風)
天才かも私!と胸を張ると、ポカーンと口を開けて見つめて来るカズミさん。私が同じ顔していたら不細工だけれど、イケメンは何してもイケメンだと言う事を思い知らされた。生き物のステージか違うのか、ガックリ。



