「あの人、よく1人になりたい時はそこで寝ていたんだ」

「そうなんだ…カズミさん仲良かったの?」

「仲良いって言うか…父親が庭師していて、次いでにここの植物園の管理も任されたりしていたから話す機会が多かった」

「へえ…」

「この場所は獅帥達の親父が、花好きな八重さんの為に作らせたんだ。時々遊びに来るとよく話してくれた」


 ほうほうと聞きながら、事もな気に天條家で庭師を務めていると言ったが、なら相当優秀だったんじゃと思った。


「どんな業界でもコネって大事なんだよ。父方の家系がどっかの名家の代々庭師してて、親父も習って庭師していたらその繋がりで声が掛かった。そんだけ」


 私の考えを読んだ様に、カズミさんはクローバーの植えられたプランターに水を掛けながらそう言った。

 そこでふと。

 
「…あのさあカズミさん。お父さんの職場であるこんな場所で、あんな事するなんて」


 お父さんに見られるなんて憤死レベルだよ私なら。

 カズミさんはジョウロを上げて、プランターを覗き込む様に座り込む。

 そして、


「死んでる」

「え?」

「母親がやった事の責任取って」

「え?」

「母親殺して、父親が自殺した。世間では一家心中って言われたけど、父親が俺だけはどうかって言う遺書残したんだよ。普通ならそれで施設に行くとかそんなだけど、親父も甘えよな。此処は天條の庭なのに」