分かんないと言い掛けて、カズミさんが立ち上がる。
「ーーー来いよこっち」
そう言って奥に進むカズミさん。
え?え?となりながら、カズミさんの後を取り敢えずついて行く。
数分も経たずに、ガラス戸で区切られた場所まで案内される。
「此処は?」
「鳥籠」
さっきから答えている様で答えないカズミさんは、鍵を開けて中に入ってしまう。
…入った方がいいんだよね。
恐る恐る中に入ると、
「ほわあ…」
確かに鳥籠だ。
外から見えない配慮か、これまた大きな木達が室内に聳え立っており、その中央にある鳥籠はガラス造りで、日光に照らされていると幻想的にすら見える。
「綺麗…ん?」
でもアレ?と。
鳥籠に沿う様にプランターや鉢植えが配置され、入り口付近には園芸用セットが幾つか置かれている。それが先程の整えられた植物園と比較すると人に見せる場所と言うよりは、秘密基地っぽくも見えたのだ。
そこでボソッと。
「俺が管理している」
「え!そうなの?」
「任されたからな」
そう言って入り口付近に置いてあったジョウロに水を入れるカズミさん。
誰になんだろうと言う心の中の疑問に、
「八重さんに」
平然とカズミさんが答えた。息を呑む。
ジョウロを傾ければ、先から水が流れる。
「此処は八重さんには息抜きの場所で、ほら見ろ彼処」
言われた先を見ると、鳥籠の中に人一人が寝れる小さなベットが見えた。



