「普通獅帥と一回でもヤッた奴って、それだけ自分の事を思っているって思い込むもんなんだよ」

「…男のベッドでの睦言は信じるなってカズミさんが言ったんじゃん」


 なんとなく愚痴っぽく言ってしまったが、章乃さんも言っていた。

 多くの男がベッドで言う事は、その時は本気で言ってはいるけれど、冷静になって聞いてみるとそうでもないんだと。(恋愛は漫画か小説ぐらいの私にはハードルが高過ぎる話だが)


「…ほーう獅帥が言葉攻めとはね」


 何があったのか察したかの様にカズミさんは口角を上げる。


「て言うかキャラ変わりすぎじゃないですかねえカズミさん」


 そうだよこれ聞くべきだった。

 何聞きたいかってこの態度の変わり様だ。


「こっちが本性。いつもの執事は外用ってだけだ」

「何でまたそんな事をやっているの?」


 私の質問に、スッと目を細める。


 え、何か言っちゃった私?


 不安になっていれば、


「ーーー俺は罪人の子供だから平身低頭生きなきゃなんねぇんだよ」


 思わぬ言葉で返された。


「罪人って、」

「俺は此処では透明人間。妃帥お嬢様と獅帥様の恩情で生かされる存在すら許されない子供」

「透明人間って、」

「妃帥お嬢様の傍だけが存在を許される唯一。哀れで愚かしい」

「意味が、」