子供の足は早い、もう声の届かない距離に行ってしまった。


「本当に開かないのかな?」


 ドアノブを回してヨイショと押してみれば。


「…開いちゃった」


 普通に開いてしまった。子供の力じゃ開けづらかったのかも…いやまさか。

 バッとドアノブ辺りを確認する。


「鍵壊していたりは…ないね。良かった…」


 物理最強後輩でもあるまいに何考えてんだ自分。

 天條家の備品を壊すなんて、家を売り払っても修繕、買い戻しなんて出来まい。本当に良かった。

 胸を撫で下ろしながら開けた先には、


「綺麗…」


 大きな木みたいな植物が入って直ぐに目に入り、その周囲を色とりどりの花々が多種多様な形の鉢植えでお出迎えし、見事な景観を作っていた。緑に降り注ぐスプリンクラーから出る水飛沫が虹を見せてくれるのも、また良い。

 神々の箱庭とかそんなタイトルが付きそうな光景に、はへーと口を開けて見つめていた。


「道までちゃんと造られてる…凄い」


 本家植物園の様に、歩き回れる様道がちゃんと作られていて、ワクワクな気持ちで入り込んで行く。


「癒される…」


 気持ち的に落ち着かない日々が続いていたので、自然のエネルギーを肌で感じながら呑気に歩いていた。

 緩急つけるが如く、


「お、こんな所に四葉のクローバーが」


 庶民にも馴染み深い植物が目に入り、ニマニマする。