その時、


「もう皆んな!綴ちゃん疲れさせちゃ駄目だよ!僕と綴ちゃんは庭園に行って来るから、それまでには仲直りしておいてね!」

「り、リヒト君!?」


 おわわ…!とグイッとリヒト君に手を引っ張られて無理矢理立たされた私は、そのままドアへと引き摺られる。


「綴」

「獅帥叔父さんも着いて来ちゃ駄目〜!」


 背後で獅帥君の呼び掛けが聞こえたが、リヒト君に引っ張られて部屋を出る事になった。


「リ、リヒト君。何処まで行くの?」

「ふふーん内緒」

 
 されるがままに、歩いて数分。

 リヒト君に連れられて来たのは以前見せられた芝生迷路でなく、


「庭園?」

「そう!」


 リヒト君は大きな硝子張りの庭園…と言うよりは、もう植物園に見える建物の前だった。

 エッヘン!と仁王立ちしているリヒト君は「因みに此処の庭園の近くに、オオミカを育てる家屋?があるんだって!」と補足情報をくれた。


「ふへ…」
 

 何回も来ている筈なのに、知らない場所がまだこんなにあるとは天條邸恐るべし。


「早く入ろ!ここのとっても綺麗なお花が沢山あるんだ」


 そう言って中に入ろうと硝子張りのドアに手を掛けたリヒト君は「あれれ?」と首を傾げている。


「開いていないかも、僕鍵借りてくる!」

「待ってリヒト君私も、」

「綴ちゃんはそこに居て!」