妃帥ちゃんが生死の境を彷徨い、獅帥君は逃避行していた時も、会いに来なかったお姉さん。

 そうかと納得する。

 子煩悩ママである輝咲ちゃんのイメージが今じゃあ強いけれど、昔は確かに人を人と思わない態度の輝咲ちゃんにビックリする事があった。

 逆に獅帥君達のお姉さんだったと言われれば、嫌な納得をせざる得なくなった。

 
「どうしても叔父としての役割を求めるなら言った通りにする」


 そして、妃帥ちゃんは目に見えて今まで会いに来なかった輝咲ちゃんを責めているけれど。


「それでいいだろう、何か問題でもあるのか?」


 獅帥君は血の繋がった家族なのに、厚すぎる壁を感じる。

 あの輝咲ちゃんが黙り込むんだから相当だ。

 何か嫌だ。これ。

 特に獅帥君は最近とても人らしさを感じる事があったのに、また冷たい獅帥君に戻った気がして、私は。


「獅帥君」


 私の呼び掛けに獅帥君が私に視線を戻す。


「どうした綴、顔色が悪い」

「っ…」


 私に対する態度はとても暖かいのが胸に来る。

 すると押し黙っていた輝咲ちゃんが、


「…そうね、確かに私はアンタ達を見捨てたわ」


 何と自分の非を認めた。

 昔ならテコでも自分の非を認めなかった輝咲ちゃんが。

 流石の2人も目を丸くする。


「でもね、それと綴の事は別よ。妃帥のミケでもあり、獅帥のお手付きでもあるって、貴方達はどうも思わないかもしれないけれど、綴にとって良くない事よ」