『あの女見せびらかす様にして!八重さん!』
『悪かった本当にすまない…』
『うう…!』
縋る彼女の両肩を支えて、謝るしか出来なかった。
自分が姉と匡獅を引き合わせてしまったから、折角選ばれたミケである彼女の立場を悪くしてしまった。
だから、
『匡獅、彼女の立場も考えてやれ』
『彼女?』
『お前のミケで、将来の妻だ』
責任を取りたかった。
何処か馬鹿にする様に『将来の妻ね…』と匡獅が呟く。その言い方が勘に触ったが匡獅と口論になると長くなる。
『…姉と遊ぶのは勝手だが、いずれお前と彼女の間に出来る跡継ぎの立場を悪くする事になるかもしれない』
10代の自分達には早過ぎる話かもしれないが、それでも妻になり得ない女を周囲でうろうろさせるのは良くない。
それこそ下手して子供なんて出来たらーーー。
『跡継ぎ…なあ八重』
『何だ』
『俺は誰からも崇拝されて止まない筈なのに、顔すら見た事ない連中からも繁殖行為を強制される事は可笑しくないか?』
『…』
『それに俺の子供が必ずオオミカになる訳でもないのに』
『それは…』
匡獅の言う事も最もだった。
ーーーオオミカは崇め奉られ、さも神聖であると言われながら、その実1番求められる事は子作りだったりする。
匡獅の火遊びが許されているのは特権階級だからだけじゃなく、オオミカの子供に価値があるから。



