もっと鳴かせてやりたい。
もっと壊してやりたい。
“もっと”が止めどなく溢れる。
興奮のままズボンに手を掛けた瞬間ーーー…。
バンッ!と背後で音がした。
振り向くと妃帥側の入り口が開かれていた。
「私が来たわよ獅帥!」
「…」
一瞬で萎えた。
裸同然の彼女の身体にシーツを掛けて包む。
「獅帥貴方。この私が帰って来るのに何処の馬の骨とも知らない女と耽っていたの?」
カツンと床に叩きつける様にヒールを鳴らして入って来た女の後ろから、小柄な影が飛び出して来た。
ベッドまで走り寄って来た影ーーー子供は。
「ママ馬じゃないよ!綴ちゃん!」
「…リヒト君?」
夢現な彼女が寝ながら知る筈の無い甥っ子、リヒトの名前を呟く。
「お姉様ちょっと止めてよ」
「綴?」
眉を跳ね上げた姉の後ろで妃帥がやれやれとした顔で出て来る。
そして完全に覚醒し切った彼女は、
「輝咲ちゃん」
バッと起き上がって、親しげに姉の名を呼んだ。



