彼女と居ると、色んな感情を知る事が出来るが、こんな感情まで知る羽目になるとは。


『獅帥君…どうしたの?』


 いつの間にか起き上がった彼女は、先程まで隠すのに必至だった身体を晒し、心配する様に俺の頬に手を当てる。

 俺は、


『もしかして具合が悪い?』


 彼女が時々出来の悪い弟を見る様なその目も、


『し、んっ!』


 堪らなく嫌だと言う事をその時に知った。

 彼女の心配な声も、否定する声も今は聞きたくない。

 喰らいつく様に彼女の唇を塞ぎ、背中を痛ませない様にベッドへと押し倒す。


『んっ…んっ…!』


 舌同士が絡み、唾液が何方のものか分からない程深く口内を荒らす。合間に、


『んっ…はあ…っ』


 苦しそうに息継ぎする彼女を可哀想に思いながら、最後は上唇を吸って彼女を離した。


『…っし、すいくん?』


 そのまま俺は彼女の足の間に陣取り、


『獅帥君…!』


 嬌声を上げるか、もう震えるしか出来なくなった彼女は、逆の立場はされた事がないらしく、『や、だ何。知らないっ…』と譫言の様に呟く。その反応に溜飲が下がりながら、彼女の身体を充分に解きほぐす。

 そしてーーー…。


「獅帥君…」


 あの時の様に。

 開けた服とその素肌、セットされた髪は乱れ、シーツの中でうねる。

 熟れた果実の様な彼女を見下ろし、自分の唇を舐めた。

 ふわふわと現実感の無い様な目で、俺を見上げる彼女に、暴力的感情が湧き起こる。