あの日の事を思い出しているのは彼女だけじゃない。
『獅帥君何か怒っているのっ…?』
布切れの様な服から出た熱った身体に、赤い花が所有の証の様に咲いていた。上塗りしながら口を付ければ、勝手に苛立つ俺に潤んだ瞳が伺う様に見つめて来る。
『…怒ってない』
抱えた足に付けられた赤い花を散らす様に口付けた。
足がビクンと揺れて、
『…ごめん私経験少ないから』
何故だか彼女は謝罪し始めて、
『私ーーーしようか?』
開かれた着物の先に視線をやる。
着物を押し上げる俺自身に思わず彼女が『大っきい…』と声を溢す。
その純粋な反応に、自分自身が痛いぐらい反応するのを感じたが、瞼を閉じて如何にかやり過ごす。
そして、
『何をするんだ?』
言葉の意味が分からなかったのと、単純に好奇心が芽生えたので聞いてみれば。
『お、とこの人って、女の人にく、口で、さ、されるの好き、なんだよね?』
恐る恐る何とも言えないない事を言った。
『…人によるのでは?』
『え、でも…喜影君よく…』
空気がその男の名前のせいで固まる。
持ち上げていた足を下ろす。
『し、獅帥君?』
『…』
今までセックスする相手が誰と寝ようがどうとも思った事がなかったが、成程。
『はっ…』
鼻で嗤ってしまう。
これは不愉快だ。



