凌久君ははあと息を吐いて、
「ーーー此処に来る事も土師の連中には伝えている」
重々しく私にそう伝えた。
「…そっか」
そんなに辛そうな顔しながら言わなくても良いのになと思ってしまう。凌久君の立場を考えれば、当たり前の事だろうから。
凌久君は「一応惣倉居るし、今日だって俺以外の護衛いるんだろうから土師が何か出来ると思えないけどな」と続けた。
なるほど。
「…ソワソワするのそれか」
不審な事故が相次いでいるから気にし過ぎかもと思っていた。
本当に危ないモノは頭まで痛くなるし。
「知らへんかったのか?」
「うん」
それも仕方ないかなって思った。
元々惣倉君と言うより、惣倉の家を警戒しているから心配だったんだろう。
「…嫌な慣れやな」
「まあ仕方ないよ、天條だもん」
「そっか…」
私達の努力では如何にもならない事が頭上を行き交う。
家庭も生い立ちも普通だけれど、傍に居たい人達は身を守らないといけない危ない環境下に居るから私もそうならざる得ず。
肉親と自分の人生を管理され、場合によっては親しい人間を傷付ける側に回らないといけない凌久君。
ああどうして人生ってこうもままならないのだろう。
ふと、
「…惣倉居ないな」
そう言われて見れば、人集りが出来ていた場所はもう閑散としていて、人集りを作った惣倉君はそのブースから居なくなっていた。



