過つは彼の性、許すは我の心 参

 

 使用人の止まる声も無視して兎に角走った。


「はあっ…はあっ…はあっ…!」


 もう嫌だこんな所。

 何処を走っているのか分からない。

 見える景色1つ1つがこんなに綺麗なのに。

 初めて来た時はこんな綺麗な場所があったんだと思ったのに。

 見掛けだけ整えたこんな場所…!


「はあっ…はあっ…あれ…っここ」


 気付いたら獅帥君の私室の前に居た。

 廊下に出ていれば使用人にまた声を掛けられちゃうかも。

 取り敢えず中に入って息を吐いた。


「はあっ…」


 歩きながらそのまま床に座り込んだ。

 その時にポケットの中が振動して、手を入れて確認すれば携帯に連絡が入っていた。

 家族からだ。


「…大丈夫、か…」


 どんなに私が迷惑を掛けても、こうやって心配してくれる人が私には居てくれている。

 でも、


「綴?」

「…」


 扉を開けて入って来たのはーーー獅帥君だった。

 コツコツと歩く音が私に近付く。


「…綴」

「…」


 返事したら色んな事をぶちまけたくなるから話したくなかった。

 近くまで来た獅帥君がしゃがみ込む。


「綴、聞いたのか…」

「…」

「鉄将に事情を聞いた」


 携帯を眺めて荒ぶる感情を抑える様に努めた。

 逃げたい、こんな場所から。


「気持ち悪いよな」

「そんな事!」


 振り向くと困った様な顔をした獅帥君が私を見ていた。


「綴がそう思うのは当然だ」