使用人の止まる声も無視して兎に角走った。
「はあっ…はあっ…はあっ…!」
もう嫌だこんな所。
何処を走っているのか分からない。
見える景色1つ1つがこんなに綺麗なのに。
初めて来た時はこんな綺麗な場所があったんだと思ったのに。
見掛けだけ整えたこんな場所…!
「はあっ…はあっ…あれ…っここ」
気付いたら獅帥君の私室の前に居た。
廊下に出ていれば使用人にまた声を掛けられちゃうかも。
取り敢えず中に入って息を吐いた。
「はあっ…」
歩きながらそのまま床に座り込んだ。
その時にポケットの中が振動して、手を入れて確認すれば携帯に連絡が入っていた。
家族からだ。
「…大丈夫、か…」
どんなに私が迷惑を掛けても、こうやって心配してくれる人が私には居てくれている。
でも、
「綴?」
「…」
扉を開けて入って来たのはーーー獅帥君だった。
コツコツと歩く音が私に近付く。
「…綴」
「…」
返事したら色んな事をぶちまけたくなるから話したくなかった。
近くまで来た獅帥君がしゃがみ込む。
「綴、聞いたのか…」
「…」
「鉄将に事情を聞いた」
携帯を眺めて荒ぶる感情を抑える様に努めた。
逃げたい、こんな場所から。
「気持ち悪いよな」
「そんな事!」
振り向くと困った様な顔をした獅帥君が私を見ていた。
「綴がそう思うのは当然だ」



