過つは彼の性、許すは我の心 参



「宿題の話だ」

「…」

「俺から言える事でもねえと思ったから宿題なんて言ったけど…実は言うつもりもなかった」


 そんな気もしていたから、特段一葉師匠の言葉に驚かなかったが。


「でも今言わなかったら、獅帥達はお前を失うって考えたら…」

「一葉さん。もし言えない事なら、」


 頭を振る彼は「…結局俺は自分が可愛いんだ。これを話したらお前は」と言葉を切る。

 そして、


「…何で俺が吐いてまであの女の相手していたと思う」


 唐突にそんな話をし始めた。

 あの女?って…。


「師匠って私が呼ぶ様になった日に居た人の事?」


 頷いた師匠の顔はずっと浮かない。


「…本当はなあの女、獅帥が目当てだったんだ」

「獅帥君?」


 一葉師匠と間違えたなんてないよね?一葉師匠が稀代の女好き…でもなさそうだし、女避けみたいのってシンカンが担っているんじゃ。


 頭に浮かんだ疑問は一葉師匠の光の無くなった目にーーーゾワリと身体が震えて消える。

 地獄の底が私を見ている。


「天女目家の女は、昔ながらの言い方で言えば乳母って言われる存在だ」


 グツグツと地獄の溶岩が見える。


「昔の時の権力者の乳母って言うのは、後に成長した権力者から寵愛を受けて子供まで儲けちまう事もあったらしい」


 鬼が笑っている。