ふわふわと泡沫の様に浮かぶその出来事は、


『んっ…待って獅帥君…』

『大丈夫だ綴、可愛い』

『あっ…』


 ただの欲望の捌け口ではなく、言動1つ1つが私を可愛い、大事だと言ってくれ、時々垣間見える容赦の無い動きは女としても求めてくれているのが分かって、私も何か獅帥君の為にしたいって気にさせられて、ああセックスって1人じゃなく2人でやるものなんだと教えられた気分だった。


『いっ』

『綴』

『大丈夫…あっ』


 身体中は満身創痍で痛い時もあったがその分私を労り、高みへと引き上げてくれる獅帥君の丁寧な導きはもう何と言うかーーーー。


「ふふっ顔赤い」

「へあ!」


 思い出さない様にしてたのに…!


 くるりと妃帥ちゃんに背を向けると、背後で扉を開く音が聞こえた。


「まあお兄様」

「妃帥、綴」


 しかもその人来ちゃったし!


「綴はどうしたんだ?」

「ふふ、綴は助平なのよ」

「違うもん!」


 くるりと振り向いて獅帥君に助平じゃない信じて!と大抗議する。

 
「助平?」

「そうだってお兄様と…」

「あーもう!駄目駄目!」


 2人に間に立って妃帥ちゃんから私の助平話を聞かれない様にしてたら、背後から両手で頭を挟まれて、見上げさせられた。
 

「…っ」

「顔赤いな」


 エクステはとっくのとうに外れている黒檀色の髪を持った、神の創造物の中でも最高たる存在が私の不調を確認する。あの赤く熟れた柘榴の様な唇で、私を。