口パクでそう伝えて来た妃帥ちゃんと、複雑な顔のカズミさんを最後に、私達2人はその場を後にした。
「獅帥君!ちょっと!」
「…」
妃帥ちゃんが考えている事も、獅帥君が考えている事も、自分がどうしたいのか分からずに、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
足を縺れさせながら見た事のない道を通ると、あんだけ遠かった別館へと早々に辿り着いてしまう。
「獅帥君!」
「…」
何も言ってくれない。
着いた部屋は獅帥君の私室で、勢い良く部屋に入れられる。
「し、」
すい君と言い掛けて、獅帥君に強く抱き締められた。
「苦しい…獅帥君」
加減が分からないみたいに締め上げられて腕をタップするが、
「嫌だ…」
悲哀の声にピタリと止まる。
私の意思を無視して勝手にミケと言われた事に怒ればいいのか、それとも何故だか悲しんでいる獅帥君を慰めるべきなのか正直戸惑う。
でも獅帥君が辛そうなのは、見ていられなくて。
抱き締める彼の顔を見上げる。
柳眉をぐっと寄せた獅帥君の辛そうな顔。
「獅帥君…辛い?」
「…」
胸まで締め付けられそうなその表情に、そっと頬に触れると獅帥君が私の手を掴んだ。
言葉が出ないでも、私からの言葉も聞きたく無い。
「し、」
また名前を呼ぼうとして、
「んっ…」
唇を塞がれた。



