物悲しく垂れるスノードロップの様に俯く妃帥ちゃんの傍で、匡獅さんが娘の両肩に手を置いた。
「…気にする事はない妃帥」
「え?」
スッと見上げた妃帥ちゃんの目は潤んでいて、匡獅さんは和かに微笑んだ。
「獅帥が望めば、私としては何でもいい」
「匡獅様!」
金切り声になった天女目春日の声はとうとう届かなかった。周囲が騒めくのを呆然と聞くしか出来ない私はーーー1つだけ分かった事がある。
「ありがとうお父様…!」
今まで妃帥ちゃんを見て来たから分かる、これは 演技だ。
父親に抱き着いた妃帥ちゃんの顔は見えないが、きっと泣いていない。何で急にこんな事を……。
「獅帥、お前はどうしたい」
「…俺は、」
獅帥君が言葉を詰まらせる。
妃帥ちゃんの意図が分からない。でも何か大事な事が今決まっちゃう気がしてーーー…。
「獅帥君…無理しちゃ駄目だよ」
口を出してしまった。
「綴…」
「ねえ、本当に大事な人が出来た時に後悔するかもしれない。そしたら、」
想像すると胸が痛む気がしたが今は私情を抜きにして、もし此処で私をミケにしたら、今も私にこれだけ優しい獅帥君が、いつか本当に大事な人が出来た時に私を切り捨てる事は出来ないと思ってしまった。



