長椅子で座っていたら、人の足音が聞こえて船漕いでいた意識が覚醒する。
「獅帥様、あの件は」
「父に聞いてくれ」
「獅帥様、今後の方針なんですが…」
い、一杯人が。
気持ちが萎みそうになるが、いやいやと首を振るって奮い立たせる。
開かれたドアから入って来たのは、人の波。
中央に居る御人は、ハイブランドのオーダーメイドのスーツをビシッと着ていて、出来る若手社長オーラを放っていた。何回か着ているのを見掛けた事があるが、今日は特に気合が入っている様に感じる。
大きなエントランスで誰が1番美しい?って鏡の中の人に聞かれたら聞くが必要あるのか!と女王様が鏡を叩き割る程の美しさの権化たる男、獅帥君。
彼を待っていた訳だけれど、同じ様にスーツを着たおじさん達が周囲を囲んでいて、とてもじゃないけれど話し掛けられる雰囲気ではない。
妃帥ちゃんが今日は大きな会合に出て、下手したらそのまま役員達と会食かもなんて言っていたけれど…。
『お兄様は今日は遅くなるみたいよ』
『そうなんだ…大変だね…』
天條邸に来て早々に、私を妃帥ちゃんに任せた獅帥君は足早に仕事へと向かって行った。
妃帥ちゃんにギュっと抱き締められてまた泣いてしまっている間に(そんなんで私は学校もお休み中)獅帥君は大人でも管を巻く様な仕事をやらされているらしい。



