一瞬八重に電灯を借り様かと思ったが、八重もそれが無ければ行動できないだろうと思い直して、女は軋む階段を一歩降りる。
暗いのは単純に怖い。
本能に突き刺さる原初的な怖さだが、注意すれば危険は無い。
そう、鷹を括った瞬間。
「…皆んな同じ事言うんですね」
「え?」
ふわりと女の身体が空中に一瞬浮き、そのままガタガタと階段を転げ落ちる。悲鳴を上げる暇も無かった。
「っが!」
階段の下の小さなスペースに置かれた、壺の置き物を飾っておく台に女の身体が当たる。
「あ、なに…」
痛みと衝撃で混乱する女の見上げた先で、不安定に揺れる壺が見える。
「大丈夫ですか?」
「助け、を」
女は頭上に見える壺が今か今かと落ちて来そうなのが気になって、普通の子供なら大騒ぎする現状に、八重が冷静過ぎる事に気付かなかった。
八重は女の落ちた場所より二、三段上で女を眺めながら「これで終わりだといいんですけれどね」と言うが女には届かない。
「あ、の」
「はい?」
「つぼ、を」
「ああ…」
「あの!」
女は伝わっていないのかと思って今出来る力の限りで叫ぶが。
「分かっていますよ、壺どかして欲しいんですよね」
早々と首だけで頷く女は、心の中で一安心する。
けれど、
「でも貴方だけ助けるのは公平ではないので、お断りしますね」
その八重の言葉に目を見開いた。



