過つは彼の性、許すは我の心 参



 一瞬八重に電灯を借り様かと思ったが、八重もそれが無ければ行動できないだろうと思い直して、女は軋む階段を一歩降りる。

 暗いのは単純に怖い。

 本能に突き刺さる原初的な怖さだが、注意すれば危険は無い。

 そう、鷹を括った瞬間。


「…皆んな同じ事言うんですね」

「え?」


 ふわりと女の身体が空中に一瞬浮き、そのままガタガタと階段を転げ落ちる。悲鳴を上げる暇も無かった。


「っが!」


 階段の下の小さなスペースに置かれた、壺の置き物を飾っておく台に女の身体が当たる。


「あ、なに…」


 痛みと衝撃で混乱する女の見上げた先で、不安定に揺れる壺が見える。


「大丈夫ですか?」

「助け、を」


 女は頭上に見える壺が今か今かと落ちて来そうなのが気になって、普通の子供なら大騒ぎする現状に、八重が冷静過ぎる事に気付かなかった。

 八重は女の落ちた場所より二、三段上で女を眺めながら「これで終わりだといいんですけれどね」と言うが女には届かない。


「あ、の」

「はい?」

「つぼ、を」

「ああ…」

「あの!」


 女は伝わっていないのかと思って今出来る力の限りで叫ぶが。


「分かっていますよ、壺どかして欲しいんですよね」


 早々と首だけで頷く女は、心の中で一安心する。

 けれど、


「でも貴方だけ助けるのは公平ではないので、お断りしますね」


 その八重の言葉に目を見開いた。