「どうしたんですか、こんな夜更けに」
「…っ」
振り返った女は「え、あの…」と口をまごつかせるが、ライトを持った人物が暗がりの中から姿を現して溜息を吐いた。
「貴方は匡獅様の…」
「シンカンの八重です」
黒髪の少年こと八重は見知らぬ大人を見ても臆せず「何かお探しですか?」と女に尋ねた。
女はこれ幸いに。
「あの…匡獅様は何方に?」
目的の人物の居場所を八重に聞いてみる事にした。
「…」
八重は少しの沈黙の後、
「貴方も、匡獅へ用事ですか」
匡獅。
呼び捨てにした事により、女の眉間に皺が寄るが、
「…不愉快でしたが、申し訳ありません。立て続けに夜更けに尋ねて来る方が多っくて、つい癖で呼び捨ててしてしまいました」
そう言われてしまえば、その尋ねて来た方と恐らく同じ目的であるから、女も曖昧に頷くしかなかった。
「…此方ですどうぞ」
「ええ」
八重は女の反応を疑問に思わず、案内をし始める。子供は単純で助かると女は心を撫で下ろしたが、今度は暗がりの廊下を歩く度に軋む音がして落ち着かなくなった。
「大丈夫です?」
「え、ええ…」
「年季が入っているから、あちこち音がするんですよね」
「…明かりがないと不便じゃない?オオミカ様も…」
「いえ。僕も匡獅…様も慣れていますので」



