重々しく、身体の中にまで響く様な、
「死者に追い縋るしか出来ないなら、同じモノになってしまえ」
恐ろしい言葉をナオに振り翳した。
時が止まったかの様な空気に息を呑む。
言われたのは私じゃないのに、心臓がバクバクと鳴り、ナオの姿があの、ユウナに似てーーー不安になった。
「…な、お」
何かナオに声を掛けなきゃ。
ただ私が言葉にする前に、
「行くぞ、早く手当しよう」
「あっ…」
獅帥君が足早に部屋から出てしまったのと、身体は疲労困憊していて何も考えられなくなっていた私は、結局ナオに何も言えなかった。
伸ばした手は空を切って、ナオの姿が見えなくなる。
「ああ俺だ。圭三郎と、警察に」
獅帥君が片手で何処かに電話を掛けているのを聞きながら、一気に疲れが出た。眠気で頭がボヤボヤし始める。
「綴?」
「ん」
獅帥君は船漕ぐ私を、先程ナオを冷たく睥睨した人物とは思えない程の優しい目で見ている。私の好きな甘い匂いもして、安心して目が閉じて行く。
「今日は疲れただろう…おやすみ」
獅帥君にはよく見守られているなあ…。
頷くまま私は意識を闇の中に放り投げた。
ーーー答えは無いのかもしれない。
地元の高校に入学してナオの傍に居続ければ何か変わったのかとも思ったが、所詮はたられば。そんな事を思っている時点で間に合う事はないのだから。



