そう言えばお祖父ちゃんがナオが家に来ていたって言っていたけれど…あの時ナオはやっぱり来ていたんだ。じゃあその頃からナオは。
「…だとしても、お前には俺以上に綴と居た時間があったのに、綴を信じられなかったのか?」
「それは!」
「くだらないな…こんなモノにまで頼るとは」
次々と現れる事実に頭が追い付かず、ゆったりと獅帥君がまた何かを拾い上げるのを見守る。
灯に照らされたそれは…錠剤?
「非合法薬物だな、これも親切な奴からか」
その言葉に目を瞬かせる。
「違う、それは、あの」
「見えないモノが見えて、現実を拒絶し、過剰に誰かを疑い、薬を増やす…どのくらい飲んだんだ」
「うるさい、俺は、ちが!」
手を伸ばすナオを振り払う。
「何を言っても無意味だ。もう…何も聞く必要はない」
私の元に来た獅帥君は、
「きゃ」
「行こう綴」
私を抱き上げて、光の虹彩で変わる神秘的な瞳が私を見上げる。
「綴、此処にお前の大事な幼馴染はもういない」
今まで呆然と獅帥君の話を聞いていた筈なのに、その言葉は重く心の中で響いて胸がなんでか一杯になった。泣きたくなった。
ーーー泣きたくなった理由はこの時は分からなかったけれど。
その時獅帥君は振り返って、言葉の出ないナオを見下ろした。



