獅帥君の話を聞きながら首を擦っていれば、口角に触れられて声が出る。
途端に柳眉が顰められ、
「殴られたのか?」
恐る恐る頷くと目が見開かれる。
「…」
「獅帥君…?」
答えない獅帥君が立ち上がると、
「おい!お前!何の権利があって!」
ナオの声が暗い室内に響く。
けれど、
「ーーー黙れ」
獅帥君の決して大きくも無い、でも強く険しい声にナオの狂気に呑まれた声が止まる。
「お前こそ何の権利があって綴を殴った」
「綴が!俺達を裏切って!」
暗がりのせいで、ナオの横に円嘉が居る様な気がした。
「はあ…」
ナオの態度に溜息を吐いた獅帥君は、私が目に止めた封筒を手に取ってナオに見せた。
「これが裏切った理由か?」
「ああ!親切に届けてくれた奴がいて教えてくれた!」
親切に届けてくれた奴?
獅帥君が中に入っていた紙…私の写っている写真と文章の書かれた用紙を床に落として行く。
「…俺も人の事は言えないが、よく知りもしない相手から貰ったこんな調査報告書を見て信じたのか」
「っ…!」
私の写った写真と文章の書かれた用紙、獅帥君の言葉から察するに、もしかして獅帥君の所にも来たお節介な奴がナオの所にも?
「けどっ…この前綴が戻って来た時、お前と綴が抱き合っているのを見た!」



