更に大きな封筒から何かがコロコロと飛び出て来て、よく見ようとした、が。
「綴」
「…」
思考を働かせる前に名前を呼ばれて顔をゆっくりと上げる。
思った以上に禍々しくもない、先程の狂気のカケラもない穏やかな顔。
でも、
「綴、俺怖い。だから一緒に居てくれ。叔父さんみたいに」
言葉には充分に狂気を乗せられていた。
ナオの手が私の首に巻き付く。
苦しい。
「ナオ…っ」
「そしたら許してやる、俺達を捨てて仲良く新しい男とも居たの」
新しい男?って獅帥君の事?駄目だ苦しくて。
俺達って。
『円嘉が何で怒っているのか分かんないよ!』
『私は!』
鬼の形相の円嘉の顔が迫り、唇と歯に衝撃が走る。
痛い、血の味が、いた、い。
私は円嘉にき、
「綴!」
その声と共に一気に空気が吸えて、意識が復活する。
「ごほっごほっごほっ…!」
「綴大丈夫か!?」
誰かが肩を支えてくれる、咳き込みながら顔を上げれば獅帥君。
平素なら声を荒げる事なんてない彼が此処に居る。
「何だよ…お前…何なんだよ!」
歪む意識の中で恐らく獅帥君に殴られたのか蹴り飛ばされたのか分からないが、ナオが座り込みながら喚く。
「ごほっ…どうやって中に、」
「開いてた」
そっか私が匂いに気を取られて閉め忘れたんだ。
「家の前で待っていようと思ったら何かが倒れる様な物音が聞こえて…」
「いっ」



