「私だけが悪いって言うの!?ナオは勝手に円香に告白されて浮かれただけじゃん!」
その瞬間足が浮く程グッと襟首を掴まれて、頬に衝撃が走った。
信じられなかった。
スローモーションの様に身体は殴られた勢いのまま隣室のナオの叔父さんが居ると言う襖ごと倒される。
「はあっ…はあっ…はあっ…!」
ナオの荒い息遣いと頬に走った衝撃と、後から来た痛みに頭がグワングワンする。
けれど直ぐ現実に戻された。
「うっ…!」
鼻腔に、恐らく臭いの元となるモノが丁度私が倒れた先の隣に居て、自然と視線が吸い寄せられる。
暗闇の中、ハッキリ視認して驚愕した。
「ひっ!」
身体に残る痛みと衝撃すら無視して、必死に座りながら離れた。居間の電灯に当たりながら肩で息をするナオに、私は現実に見たモノについて恐る恐る問い掛ける。
「ナオ…これって」
「…これって言うなよ失礼だろう叔父さんに」
興奮で熱された頭が嫌でも冷えていく。
唾を飲み込む。
出来るだけナオを刺激しない様に。
「ごめん…でも叔父さん」
死んでいるよね?
途轍もない刺激臭の正体。
蝿や蛆に集られたーーーナオの叔父さんの身体。
「…何言っているんだよ生きているよ叔父さんは」
「生きているって…」
どうして何でが頭に思い浮かぶ。
いつからなんだろういつから。



